金属アレルギーについて

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金属アレルギーとは

免疫反応は本来有害な病原体を排除するものですが、その反応が過度になり、組織の傷害・疾患を引き起こす場合に”アレルギー”という言葉が使用されます。そのアレルギー症状は後で紹介しますが、皮膚や口腔粘膜など多種に及んでいます。また、日常生活の中で触れる機会の多い金属製品は大変多いので、原因を特定することが大変難しいです。

参照:お口のテーマパーク8020

歯科と金属アレルギーについて

日常の歯科治療で使用される金属材料が原因で生じるアレルギー性接触皮膚炎も問題となっています。この分野は、専門医も少なく、アレルギーの基礎知識を理解した歯科医を増やして真剣に取り組む必要があります。そのためにまず、アレルギーの分類と免疫学的機序を理解すべきです。CoombsとGellらによる免疫学的組織障害の機序に基づいたアレルギーの分類は広く受け入れられています。現在では従来のI~IV型に加えてV型の存在が広く認められています。

参照:お口のテーマパーク8020

金属アレルギーの分類

Ⅰ型アレルギー(アナフィラキシー反応、即時型アレルギー)

抗原との接触後、短時間で起こる反応です。この反応では,抗原は侵入後抗原提示細胞によりB細胞に提示され、ヘルパーT細胞の助けにより抗原特異的IgEが産生されます。局所的に産生されたIgEは、局所の肥満細胞のFcεレセプター(FcεRI)に結合します。IgEは局所だけでなく、血中の好塩基球や他の組織のFcεRIにも結合し、アレルギー反応を誘発します。

代表例:花粉症・蕁麻疹・喘息・アトピー性皮膚炎・ハウスダストアレルギー

Ⅱ型アレルギー(組織障害性反応)

抗原+抗体+補体が細胞表面に結合した結果、その細胞が侵襲を受ける反応です。抗体が付着した細胞(標的細胞)に限局して障害が生じるのが特徴です。標的細胞上の抗原に抗体が結合すると、そのFc部分とエフェクター細胞(好中球・好酸球・マクロファージ・血小板)のFcRIの結合によりFcレセプターを介して架橋が生じます。一方で結合した抗体は補体の古典的経路を活性化し、形成された活性化C3は補体成分に対するレセプターを有するエフェクター細胞との結合を深め、さらに機能を亢進(こうしん)させます。標的細胞と結合している補体やIgGなどは、エフェクター細胞のライソゾーム活性を高め、貪食機能を亢進させる一方、組織障害をも引き起こします。

代表例:自己免疫性溶血性貧血・血小板減少症

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体反応)

諸臓器に広く分布する抗原や血中の可溶性抗原に対する抗体が、大量に生産されると抗原抗体複合体が形成され、網内系がそれを十分処理できない時などに起きます。その免疫複合体が組織に沈着すると補体が活性化され、多核白血球がここに集積してきますが、組織に沈着した免疫複合体を十分に貪食出来ないため、ライソゾーム酵素を放出する結果、組織が傷害されると考えられています。この際の組織障害は、免疫複合体の沈着するあらゆる臓器に生じうるのが特徴です。

代表例:全身性エリテマトーデス

Ⅳ型アレルギー(細胞性免疫反応、遅延型アレルギー、細胞免疫型アレルギー)

反応が出現するまでの時間が長いのが特徴です。ⅠーⅢ型までが、液性抗体が関与する反応であるのに対して、Ⅳ型はT細胞、マクロファージなどの細胞が関与します。通常、抗原に感作されたT細胞の産生するサイトカイン(リンホカイン)によって引き起こされる一連の反応です。

V型アレルギー (抗レセプター型アレルギー)

受容体に対する自己抗体が産生され、その自己抗体がリガンドと同様に受容体を刺激することで、細胞から物質が分泌され続けるために起こるアレルギー.基本的な機序はII型アレルギーと同じであり、刺激性という点だけが異なります。

金属アレルギーは、2段階のプロセスによって発症します

金属アレルギーは:①感作 ②誘発 の2つのプロセスに分けて考えられています。

  • 感作

    分子量500以下の低分子物質(ハプテン)が皮膚または粘膜に侵入しタンパク質と共有あるいは非共有結合により、ハプテン・タンパク質複合体(完全抗原)を形成します。この抗原は、表皮内あるいは粘膜内に存在するランゲルハンス細胞により処理され、抗原情報としてTリンパ球に伝達されます。抗原情報を持ったTリンパ球は所属リンパ節に移行し、ここで分化・増殖を繰り返し、遅延型エフェクターT細胞、抗原特異的T細胞が生み出されていきます。

  • 誘発

    感作が成立した個体に再度同抗原が体内に侵入すると遅延型エフェクターT細胞がその抗原を認識した途端、様々なサイトカインを産生しアレルギー症状を引き起こします。

参照:お口のテーマパーク8020

金属アレルギーの検査法

金属アレルギーの検査法には再現性が高く、簡便な方法として、48時間閉鎖型パッチテストを採用している専門医は多いです。東京医科歯科大学歯学部附属病院・歯科アレルギー外来での、患者への対応法を図1に示します。

金属アレルギーの治療の概念

  • 1.検査(問診・エックス線撮影など):金属アレルギーの可能性があるかの見極め
  • 2.パッチテスト・血液検査:アレルゲンの特定
  • 3.金属成分分析検査:アレルゲンの存在場所の特定
  • 4.診断:治療計画の立案
  • 5.原因除去療法(抗原除去治療):原因金属の除去・仮封・テンポラリークラウンの製作など
  • 6.再修復治療:アレルゲンを含まない材料を使用
  • 7.経過観察:アフターケア

図1 金属アレルギー検査のフローチャート

パッチテスト(Patch test)とは?

48時間閉鎖型パッチテスト(PT)と呼ばれています。試薬の付いたテープを背中に2日間貼り、2日後それをはがし、除去後、皮膚に現れた反応を2日目、3日目、7日目の3回を国際基準(ICDRG)に基づいて判定する方法です。

金属アレルギーに対する血液検査とは?

患者白血球(とくにTリンパ球)を培養し、そこに金属イオンを加え、H3 thymidin uptakeを見て、アレルギーのある、なしを調べる検査です。この検査をリンパ球刺激試験(Dental lymphocyte stimulation test・DLST)といいます。

この培養反応は、抗原と抗原提示細胞上のHLA class II抗原とにより誘導されるものであり対照の抗原無添加培養とその比Stimulation Index・SI)やその差(Δcpm)を指標に判定されます.SI値による陽性反応の判別には、本邦で一般的に採用されている薬剤アレルギー性肝障害の判別に従いSI>180を陽性としています。

利点:パッチテストによる感作を防げる上、患者の来院回数も減らせます。

欠点:しかし現状では、DLSTは金属の場合、多くの人が陽性に出てしまい、偽陽性(false positive reaction)が多いという報告もあります。これは、金属イオン自体の持つT細胞活性化能力による可能性が大きいため、今のところDLSTはPTに置き換えることはできません。

現在本学では有効性があるとされている金、ニッケル、パラジウム、コバルトに対してのみ血液検査を実施しており、全ての金属を対象とできないことと、検査費用が高いことが問題となっています。

金属成分分析検査とは?

・蛍光X線分析装置による非破壊的成分分析

問題となる金属種(アレルゲン)が、口腔内のどの場所に存在するのかを非破壊的かつ正確に捉えられるため、抗原のみを選択的に排除することが可能となります。簡単に言いますと、外さずに成分分析する方法です。

パッチテストなどでアレルゲン金属が確定した場合、問題となっている金属がどこに存在するかを検索しなければなりません。口腔内に存在する金属修復物の中にアレルゲン金属が存在するのかどうかを調べる方法がなければ、全ての修復物を除去することにもなりかねません。しかし、それでは患者及び歯科医側の経済的、時間的負担が大きく、治療を躊躇せざるを得ません。口腔内に金属製修復物が存在することは分かっても、その含有元素や溶出傾向を肉眼で色や形、表面性状などから確かめることは、熟練した臨床家でも不可能です。また肉眼所見だけで、使用されている金属材料の成分を判断し、金属修復物をむやみに除去したのでは、再修復治療に要する時間・費用・労力などを考えると、非常に負担が大きくなる可能性が高いです。

パッチテストなどで陽性となった金属元素が含有しているか否かを調べるために、口腔内の詰め物や義歯の表面を軽く削り、その粉末(約0.1mg)を採取して蛍光エックス線分析装置(XRFS)を用いて分析を行うことができます。

原因除去療法(歯科的)について

抗原を含有する修復物を口腔内より選択的に除去し、一定期間仮封や仮歯などで経過観察を行いながら治癒傾向を見ます(2~3カ月から1年程度)。治癒の方向に進めば、慎重に材料選択を行いながら、再修復に進みます。

当外来を訪れた患者さんのデータによれば、原因除去療法が終了して2カ月経過後では50%以上の患者さんに症状の変化はみられませんでしたが、アレルゲン除去から約2年後では改善傾向がみられるのは約60%と増えてきました。しかし、中には症状の変化は見られなかった人もいますので、修復物を外したからといって必ず治るとは限りません。

修復治療・交換治療(原因・抗原除去療法) -- 選択的抗原除去法

口腔内に存在する、原因金属含有修復部を選択的に除去し、アレルゲンを含有しない別の材料で再修復する。

  • 1.要点

    ・ 歯科用材料の具備すべき要件を満たしていること(生物学的・化学的・機械的・操作上・品質管理上の要件)

  • 2.原因除去療法の必要条件

    ・ 皮膚科的な原因除去療法の知識を持つこと(相談可能なアレルギー専門の皮膚科と連携すること)

    ・ 口腔内金属中のアレルゲン存在部位を特定すること(口腔内金属の成分分析が可能なこと)

    ・ 治療用材料に対する配慮が可能なこと=市販の歯科用合金の正しい選択基準を持ち、特殊な材料(チタン・ハイブリッドセラミックス・セラミックス・ジルコニア等)による治療システムを確立していること

修アフターケア -- 経過観察と再発防止

アレルゲン除去完了後も長期間にわたり症状の変化を必ず観察し、また、再発防止のために新たに修復処置する歯は、慎重に材料を選択する。

  • 1.要点

    ・ アレルゲン完全除去後、1年間は来院し経過観察する

    ・ 症状が好転してゆくようならば、3カ月に1度の来院、6カ月に1度の来院という形で、間隔を広げていく

    ・ 各来院ごとに、症状確認・記録を必ず行う

  • 2.再発防止

    ・ カリエスなど処置すべき歯が発生した場合、再発防止のため、当然アレルゲンを含有しない材料で補綴・修復する

参照:お口のテーマパーク8020

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