歯石が溜まると歯を支える骨は失われるの?
答え
・歯石の有無のみが歯を支える骨を失わせるのではなく、歯石の形成に加え不適切な口腔清掃状態(歯磨き)が歯を支える骨に影響を与えます。
Anerud A, Loe H, and Boysen H: The natural history and clinical course of
calculus formation in man. J Clin Periodontol 18:160-170, 1991.
【実験内容】
スリランカ人とノルウェー人とで、歯石の形成と歯を支える骨の失われる程度を調べました。
スリランカにて1970年~1985年にわたって
歯科治療も歯磨きの習慣も存在しないスリランカ(注:実験当時です)では歯石がどの様に形成されるか?
そして、それが歯を支える骨にどの様な影響を及ぼすか?
調査しました。
もう一方のノルウェーでは、口腔ケア・歯周病予防の考え方が普及しており、定期的な歯科医院への通院・クリーニングが行われていました。
その状況での歯石の形成と歯を支える骨の状態についての調査が1969年から1988年の19年にわたって行われました。
【結果】
スリランカ人では、歯石は14歳以前に形成が始まった。
40歳は全ての被験者のほぼ全ての歯の表面に歯石が形成されました。
特に喫煙とビンロウを咬む習慣の両方を有するものは、一方の習慣を有するものに比べて歯石が多く、どちらの習慣も有しない者は最も歯石の量が少なかった。
スリランカ人では、歯石を有する歯は歯石無しの歯に比べ、歯を支える骨の失う量が優位に大きかった。(*歯石があると、歯を支える骨が失われやすい!!)
ノルウェー人では、思春期から40代まで歯石は高頻度では増加しなかった。
50代に近づくにつれ、歯と歯の間に歯石の付着が増加した。
ノルウェー人のグループでは、歯石と歯を支える骨の間に相関は認められなかった。
(歯石があっても、歯を支える骨が失われやすいかは関係無い!!)
歯石の形成と歯を支える骨について異なる結果が出ました。
ここから考察するのが大事です。
・歯石の有無のみが歯を支える骨を失わせるのではなく、歯石の形成に加え不適切な口腔清掃状態(歯磨き)が歯を支える骨に影響を与えます。
だから、毎日の歯磨きが大切で、歯の周りの汚れを除去しやすい(プラークコントロールを行いやすい)口腔内の環境を整える(矯正・歯周外科・補綴・修復物による治療)のも大事です。