歯の損耗(トゥースウェアー)には
酸蝕
咬耗
摩耗
アブフラクション
の4つがあります。
特に酸蝕は他の損耗を加速させるため特に重要です。
原因を適切に解決しない限り、歯は失われ続けてしまいます。
Harpenau LA, Noble WH, Kao RT: Diagnosis and management of dental wear. J Calif Dent Assoc. 2011 Apr;39(4):225-31.
酸蝕とは
酸によって歯が損耗(溶けてしまう)化学的な現状。
胃酸の逆流によって、歯が酸に触れて起こります。
逆流性食道炎や過食症のように胃酸の逆流が主な原因です。
他には、酸性の食べ物や飲み物を頻繁に摂取するとこで起こります。
例えば酢漬けの食物やレモン等柑橘類のような酸性の食物、スポーツドリンクやソフトドリンクのような飲み物です。
酸蝕はまず、酸によってエナメル質が分解され、表面下数μmにわたってミネラルの喪失が起こります(脱灰)。
脱灰された処に柔らかい層が形成されます(軟化)。
これらの層は、日常的に咬耗や摩耗等で擦れることで歯の損耗が進みます。
歯の表面にあるエナメル質が失われ象牙質が露出すると、
象牙質は擦れる等の機械的な刺激・タンパク質分解酵素にとても弱いので、
象牙質の破壊が進みます。
咬耗とは
歯と歯の接触によって起きる歯の物理的な損耗です。
日常の食事の時の結果として起こることもあれば、歯ぎしりに等の無意識で起きる歯と歯の接触が原因となって起こることもあります。
摩耗とは
歯と異物(歯以外)の接触によって起きる歯の物理的な損耗です。
歯ブラシと歯磨材の不適切な使用によって歯と歯茎の境目に起きる凹みはこの典型例です。
アブフラクションとは
咬むときの力が原因となり、歯と歯茎の境目に応力が集中した結果起こる歯のV字型の凹みです。
アブフラクションについては肯定的な見解と否定的な見解の両者が存在して、未だ結論が出ていません。
肯定派によると、歯に加わった荷重によって歯と歯茎の境目に引っ張り応力が集中し、エナメル質に細かい亀裂が入ることが理由としている。
酸によって歯を失うペースを速めてしまう原因の分析
歯の損耗は、酸蝕、咬耗、摩耗、アブフラクションが同時かつ互いに関連しあって起きることがほとんどであるため、主因を決定することは困難です。
しかし、酸蝕はエナメル質を軟化させるため、その他の損耗を加速させる効果があります。
酸蝕が疑われる場合には病因を特定し、酸の元を断つことが重要になります。
酸蝕のリスクには下の4つのグループがあります。
- 思春期男性―酸性飲料水の多量摂取
- 思春期女性―過食症
- 胃逆流性食道炎患者
- 口腔乾燥につながるような常用薬を服用中の高齢者
過食症や胃逆流性食道炎が原因の場合は医科の先生との対診が必要になります。
酸蝕の原因が食べ物や飲み物によるものの場合、食事指導が必要となります。
エナメル質の分解はpH5.5以下で起こってくるので、どのような食物が酸蝕症につながるのかを具体的に知ることが大切です。