様々な原因で歯が磨り減ってしまうことがあります。
歯が磨り減る原因を解決しなければ、歯は磨り減り
短くなり続けます。
そして、ほとんどの場合は痛みが無く進行します。
歯が磨り減ってしまったのであれば、
減った分だけ人工物を盛り足せばよいと安易に考え
咬み合わせを過度に上げてしまうと
歯の咬み締め、顔や顎の周りの筋肉の疲労、歯や口の周りの筋肉・顎関節の痛み
頭痛、歯の圧下、セラミックスの破折、どこで咬んでよいか解らなくなる
歯の磨り減りの続発
と困ったことが治療後に生じる可能性があるため
本当に咬み合わせの高さも減ってしまったかを詳しく検査、評価することとても重要です。
なぜなら、
ゆっくりと歯が磨り減った場合、歯が磨り減った分だけ、
骨が挺出(骨ごと歯の位置が変わる)するため、咬み合わせの高さが変わらないことがあるためです。
しかし、歯の磨り減りの原因によっては、骨が挺出するのを上回る速度で磨り減りが起こることがあります。
これらについては、お口の中を見ただけでは解りません。
様々な検査を行い総合的に評価をします。
Turner KA, Missirlian DM. Restoration of the extremely worn dentition. J Prosthet Dent. 1984 Oct;52(4):467-74.
発音による評価
S音を発生した時に上下の前歯にどれくらいのスペースがあるかを確認します。
このスペースは最小発音間隙と呼ばれます。
通常は1mmで、1mm以上の場合は咬合高径の低下が疑われます。
具体的には、60~70までを英語で発音してもらう。(*英語圏での検査方法です)
日本語であれば『咲いた咲いた桜が咲いた』と発音してもらう等が検査方法となります。
安静空隙による評価
大きく歯が磨り減ってしまうと、安静空隙(力を入れず、普段の歯と歯が接しない状態)の増加を認める事があります。
しかし、Niswongerが200名の重度の磨り減りのある患者さんを調査した研究では
83%が以前として約3mmの安静空隙があったと報告しています。
あくまで、補助的に用いるべきと考えられます。
顔貌による評価
咬み合わせの高さが減ってしまうと、顔貌に変化が現れます。
唇を支える所がなくなるため、唇薄くなる、口角が垂れ下がる等が起きます。
しかし、高齢者においては皺等の加齢による生理的変化も可能性があります。
生理的な変化をも改善させようとすると、咬み合わせの高さを挙上し過ぎることになります。
著者は、咬み合わせの高さの低下の有無と被せ物を作製するためのスペースの有無に基づいて
重度な磨り減りの症例を以下の3つに分類しています。
ターナー分類1
咬み合わせの高さの低下を伴う重度の磨り減り
(安静空隙3mm以上、最小発音間隙1mm以上)
咬み合わせの高さの低下が認められるため、磨り減った分だけ高くして被せ物を行うことが治療方法となります。
3つの中では、比較的難易度の低い分類になります。
ターナー分類2
咬み合わせの高さの低下を認めない重度の磨り減り、しかし被せ物をするスペースがある。
(安静空隙3mm、最小発音間隙1mm)
磨り減ってしまった分、歯が骨ごと挺出しているため、
咬み合わせの高さは低下していません。
咬み合わせの高さを変えてはならない症例です。
しかし、普段咬んでいる咬み合わせの位置と、中心位(適切に咀嚼運動ができる一番後ろの咬み合わせの位置)とにズレが大きく
咬み合わせの位置を中心位に誘導することで、被せ物のスペースを確保します。
歯の磨り減りによって、歯の長さが失われています。
適切な歯の長さを確保するために歯茎の手術が必要な場合もあります。
ターナー分類3 咬み合わせの高さの低下を認めない重度の磨り減り、被せ物のスペースは殆どない
(安静空隙3mm 最小発音間隙1mm)
分類2と違い、中心位と普段咬み合わせている位置がほぼ同じのため
中心位の位置に咬み合わせの位置を変えても被せ物のスペースが足りません。
そのため、被せ物のスペースを確保するために
矯正治療、分節骨切り術、歯周外科手術、抜髄等が必要になってきます。
咬み合わせの高さが変わっていないため、咬み合わせの高さを高くするのは推奨されません。
様々な理由で、どうしても咬み合わせの高さを高くするのがやむをえない場合のみ
必要最小限にし、マウスピースを作製して新しい高さに対応できるかを
長期にわたって評価することが不可欠です。
ひのまる歯科では
分類1および分類2の一部の症例までは治療が可能です。
分類2および分類3の場合は、様々な専門医と協力して
治療を行うことになります。
治療を開始する前に、どの分類の症例なのかを
適切に見極める診断力がとても大切です。
そして、信頼の出来る様々な分野の専門位と協力して治療を行うことになります。