70代女性
『奥の被せ物が外れてしまって咬めない』
食事に困ってしまったため、症状の改善を希望して来院されました。
左下の奥歯
3本分の繋がった被せ物(ブリッジ)が外れてしまい
左奥で咬めなくなっています。
一番奥の歯
虫歯(神経を取っているので痛みは感じません)が進行して殆ど歯が残っておらず
再度、被せ物をして咬む力に耐えるのは難しい状態です。
奥から二番目の歯
10年以上前に抜歯されています。
奥から三番目の歯
神経を取ってあるため痛みは感じませんが、虫歯はありません。
再度、被せ物をして咬む力に耐えることは期待できます。
治療の方針
➀再度ブリッジを作成する。
一番奥の歯の虫歯の進行が著しいため、長期に機能するのは期待できない。
場合によっては数週間もせずに再度外れる事も十分に考えられる。
さらにブリッジの土台となる奥から三番目の歯も負担が大きくなるため一緒に悪くなる可能性がある。
②入れ歯を作成する。
奥から三番目の歯は被せ物にする。
一番奥と奥から二番目の歯の部位に入れ歯を作成する。
毎食後に入れ歯の手入れが必要になる。
入れ歯のバネのかかる歯は虫歯や歯周病のトラブルが起きやすくなる。
入れ歯で元々あったブリッジと同じ位に咬む力を期待するのは難しい。
特殊な入れ歯であれば、しっかりと咬むことを期待できるが、
治療のために削る歯の本数が増えて費用もそれなりにかかる。
③インプラントによって咬めるようにする
奥から二番目の歯の場所にインプラントを埋入して、咬めるようにする。
しっかり咬めることが期待できる。
骨の状態によっては行えないことがある。CTを撮影した時に最終的な判断が出来る。
オペが必要。
インプラントにしてもインプラントの周囲に炎症が起きることがある。
インプラントの被せ物をした後もメンテナンスは必要。
保険適応外のため費用がかかる。
④奥から三番目の歯にだけ被せ物をする
奥の二本分は何もないままにします。
奥から三番目の歯だけに被せ物をして日常生活で咬むことに困らなければそのままにします。
困るかどうかは、仮歯にして生活してみて、さらに奥歯が必要そうであれば
その時に、再度検討する。
奥の2本がないと、三番目の歯にかかる負担が大きくトラブルが起きやすくなる。
咬み合う反対側の歯も同様に負担が大きくトラブルが起きやすくなる。
歯の本数が減るため、反対側の奥歯や前歯の負担も大きくなりやすい。
失った歯の反対側の歯が伸びてくることがある。(*伸びても生活に困らなければそのまま)
⑤移植
一番奥の歯を抜歯して、別の歯を移植する。
*今回は移植に適する歯がなかったため、選択肢に入りませんでした。
今回の患者さんは
「すぐに外れたりトラブルが起きやすいのは困る。入れ歯はしたくない。
食事内容は若い時とは変わってきてる。まずは、奥から三番目の歯に仮歯をつけて
生活をしてみて困ったことが無ければ、その1本だけ被せることにしたい。
後々にトラブルが起きたらその時に考える。
次にいつ困るかはわからないが、
その時の残りの人生の時間と自分の生活スタイルに合わせて治療方法を決めたい。」
と希望されました。
仮歯で2週間ほど生活をして、とくに食事や日常生活に困ったことがなかったため
奥から三番目の歯に被せ物をするだけとなりました。
しかし、今後は3~4か月おきにメンテナンスに通い、
注意深くお口の中を観察しトラブルの兆候を見逃さない様にしています。
ひのまる歯科では、どの治療方法が良い悪いとは考えておりません。
患者さん一人々々が、ご自身のお口の健康について理解をして
自分の日々の生活や人生を楽しめるよう、十分に時間をかけて治療方針を決めています。